みんなが「社長」で「従業員」。そんな新しい働き方が注目されてい
る。「労働者協同組合」(ワーカーズコープ)と呼ばれる。これまで
のような「雇う」「雇われる」の関係ではなく、働く人たちが自ら出
資し、対等の立場で経営にあたる。雇用情勢が悪化するなか、「仕事
おこし」の役割も期待されている。
京都市伏見区の住宅街。民家の一角に、ケアワーカーの派遣を請け
負う労働者協同組合「きょうとケアワーカーほんわか」の事務所があ
る。従業員にあたる組合員は21人。20人が女性だ。
95年7月、ホームヘルパー養成講座を受講した9人の主婦たちの間で
話がまとまった。出資金は1人5万円。事業計画から給与額、仕事の役
割など全部、話し合いで決める。担当はあるが、上司も部下もいない。
中村憲子さん(45)は、副所長を担当する。パートで生活協同組合
の配送をしていたが、94年12月に契約を切られて失業。寝たきりの父
親と二人暮らしで20年以上、介護を続けていたこともあって、ヘルパ
ーの資格取得を目指した。講座を主催していた日本労働者協同組合連
合会に労協の考え方を教わり、共感した。
出資金で電話とコピー機を借りた。チラシを5千枚つくり、病院や医
療器具販売会社に配った。しかし、依頼は来ない。半年間、みんなが
無償で働いた。
介護保険が導入されたことが追い風になり、昨年から事業が軌道に
乗った。常時三十数件の利用があり、売り上げにあたる事業高は年間
約2千万円に。収支もようやくトントンになった。
中村さんの月収は約18万円。今夏には初めて8万円のボーナスも出た。
「ほんわか」だけが収入源だから生活は苦しい。
でも、それ以上に「仲間と一緒に仕事をつくっていく喜び」がある。来
年は通所介護の分野にも事業拡大するつもりだ。
日本労働者協同組合連合会によると、労協方式の組合は全国に約100
あり、計約3万5千人が働いている。事業高は年間約172億円。組合数、
事業高とも年々増ているという。
失業率の高まりを背に、同連合会は「仕事おこし」としての労協の
え方を広めようと、関東、北海道、九州などシンポジウムを計画して
いる。近畿では18日午後1時から、奈良市の奈良県女性センターで開
かれる。
問い合わせは同連合会センター事業団関西事業本部(06−6452−1168)
へ。
朝日新聞 平成13年11月10日 朝刊より